7月15日から半月程、アメリカで仕事をしておりました。私が主に滞在していたカリフォルニアのSouth Bayエリアは、気候が最高に素晴らしいところです。日本の蒸し暑さとは全く縁遠い別天地です。日本ではゲリラ豪雨や熱中症で多くの死者が出るなど異常気象のニュースが毎日取り上げられていました。今では、海外のどこへ行ってもどこに居ても、パソコンさえ立ち上げれば、その日その時の日本でのニュースをリアルタイムで見ることができます。とにかく便利ですね。
外大の学生の頃、英国の著名な歴史家であるToynbee博士(1889~1975)の一説を聞いてしきりに感動した記憶があります。「近代技術の到来によって、その土地や地域の問題が世界規模の問題になってしまっている・・」という指摘でした。annihilation of distance(物理的距離の破壊), shrinkage of space(空間の圧縮)という言葉が頻用され、なるほど、世の中は凄いスピードで技術革命が起こっているんだと感じました。ジャンボジェット機などはその頃の産物です。そして、革命ということばで表現すれば、今はIT革命で、生活シーン、ビジネスシーンがここ何年かではたまた大きく様変わりしました。
さてさて、本題に入ります。今回のミッションはいくつかありました。その一つが日本の食品のアメリカ市場への参入支援です。アメリカの人口は約3億人ちょっとです。そのうち、日本人・日系の人たちは0.3%といいますから100万人に満たない人口です。日本の食品会社、食の生産者はアメリカ在住の日本人や日系の人たちを対象とした小さいマーケットではなく白系を中心としたメインストリームにいかに参入するかが、目指す目標となっています。
国内市場が閉塞感を呈している今日、日本の産品や技術を海外に持っていくことは日本企業が持続して成長するためには不可欠です。日本の企業を構成するのは圧倒的に中小企業です。95%以上を数的には占めているのではないでしょうか。SME (Small and Medium Enterprises)と呼びます。大手は独自の情報網を持ち、お金も持ち、人材も持ち、自力で海外展開できる体力と知力が備わっています。しかし、これまで大手を支え、日本を支えているSMEにはそういった企業は少なく、よって、うちのような会社の出番もあるというわけです。
日本の食品企業がどう苦労してアメリカのメインストリームに入り込んでいるか一つ成功例をご紹介しましょう。「やめられない、止まらない」で有名な「かっぱえびせん」を製造販売しているのはカルビー(株)です。アメリカでも ”Shrimp Flavored Chips” として製造・販売を行いアジア系スーパーにも数多く出回っています。本物に似せたコピー商品も見かけます。私はある韓国系のスーパーで見かけました。
カルビー社は1970年から米国進出を果たし、これからご紹介するヒット商品、さやえんどうをベースにしたスナックを発売しはじめたのは1999年でした。そこから遡ること2年、1997年にフランスで開催されたスナック菓子のコンベンションで、カルビーの展示ブースが黒山の人だかりになった「試食品」が“さやえんどう”でした。これならアメリカでも!と思いアメリカでの挑戦をスタートしました。そこから多くのトライアル&エラーを繰り返すことになりました。
商品の特徴は健康志向です。豆の風味を活かし100%ナチュラルで着色料や香料は一切使わず、ターゲット層は20代後半から40代・50代前半の教育レベルの高い女性としました。フランスで試食をしたとき、特に女性からの人気が高かったためです。マーケティングの基本は、「だれに」「どう」売るかです。アメリカ人女性の買い物に関する実態調査を行い「だれに」を絞り込んだ結果、女性たちがよく利用するスーパーのこともわかりました。グルメ系スーパーのWhole Foods Market、Trader Joe’sなどです。オーガニックがキーワードとなるお店です。健康志向でスマートな女性たちが好んで立ち寄るのが生鮮野菜コーナー、鮮度や品質を手にとって確認し、納得をして野菜を選ぶということも分かりました。
一方、カルビーの商品はスナック菓子でjunk foodのカテゴリーとなります。彼女たちはスナック売り場を敬遠します。そこでの一策が、ならば、彼女たちが足を運ぶ野菜コーナーに置いてもらうのはどうかと思いつきました。その後、”Snapea Crisps”としてテスト販売をスタート、「サラダのように食べられるスナック、スナックのようなサラダ」を基本コンセプトに打ち出しました。ユニークな試食方法として効を奏したのが、無人の試食販売です。日本でもマネキンと称する人たちがスーパー等で試食販売をしています。当初、マネキンを使って有人試食を行っていましたが、押し付けられるイメージがありターゲット層に嫌われることがわかりました。そこで、写真のように透明ドームでカバーした無人試食台を開発しました。このアイデアがヒットし、商品が流れ出しました。この無人の試食台は現在いろんなところで見かけるようになりました。
現在、このSnapea Crispsの販売は年間1200万袋で、将来は全米人口の4割に相当する1億2000万袋を目標においているとのことです。正に、「何を」「だれに」「どう」販売するかを緻密な調査を経て、何度も失敗を繰り返しながら取り組んで結果、米国スーパーのメインストリームに入り込むことができた成功例です。「さやえんどう」食べたくなってきました。

展示会のすすめ (2010.9.30)
「物見遊山的な旅行より、展示会を見て歩く方が、人生が100倍楽しくなる!」これは私の持論です。展示会に出る人行く人、ビジネスが目的です。ただ、仕事目的だけでなく、ぶらりと本屋に立ち寄るように、気軽に展示会に足を運んで欲しいと思います。展示会は私たちの人生に多種多彩な愉しみをもたらしてくれ、生活に無数のアイデアとヒントを提供してくれます。例え、行き当たりバッタリの展示会であったとしても、新たな発見が必ずあなたを待っています。観光名所を巡り歩いた後は、その国で開催されている展示会を覗いてみてください。もちろん、国内での展示会も同じです。世界からも多数の出展者が集うからです。
今月(9月)はどこの展示会に出たのか手帳を調べてみました。三つの展示会に行きました。一つ目は、政府主催のスペイングルメフェア。海外からの食品の輸入品で、ヨーロッパから最も多いのはワインとオリーブオイルです。最近は半数以上の日本の家庭でオリーブオイルを使い始めています。オリーブオイルは健康にも良いアイテムです。スペイングルメフェアでは、やはりワインとオリーブオイルを扱う企業が圧倒的、続いてハム・チーズ類でした。このフェアは業界向けで、日本の参加企業は400社ほどで、試飲・試食を繰り返しながら商談が活発に行われていました。仕事と言えど、ワイン好きにはたまらないフェアと言えます。
次の二つは一般の方たちも来場可能なBioFach Japanという日本最大のオーガニック専門展示会とJATA国際観光会議・世界旅行博です。
オーガニックの展示会に関して言えば、ドイツで20年前に始まったこのオーガニック展が最初と聞いています。今では、自然食品、 化粧品、衣料品、雑貨品、医薬品、エステティックサービス、ホテル、有機認証サービス、雑誌社等メディア、小売店、通信販売業など多種多様な出展者と来場者が集うイベントに成長しているようです。私が興味を持ったのはオーストリア産のオーガニックの紅茶とドバイ産のチョコレートでした。ドバイ産のチョコレートはサンプル切れでテイスティングが出来ず残念でした。
JATAについて言えば、観光は日本のまさしく成長戦略の重要な根幹を成す一分野であり、様々な経済波及効果が得られる基幹産業です。私の仕事で言えば、海外政府や政府観光局との関係において、その国の観光PRと日本人旅行客増大を目指す支援サービスです。こういった世界各国の政府観光担当者が集う展示会や国際会議はまさに当該分野のキーパーソンとの貴重な出会いの場、ビジネスの場です。こちらから出向くことなく、向こうから一堂に集ってくれる展示会はビジネス、プライベートの両方において宝の山と言えます。
展示会は業界向け・プロ向けのみならず、一般来場者の参加を歓迎している展示会も多くあります。有明の東京ビックサイト、千葉の幕張メッセ、有楽町の東京フォーラム等で開催される展示会情報を調べて、興味ある展示会に参加されてみてはどうでしょうか。海外旅行をされる際は、開催される展示会に合わせて前後の旅行を計画してみることをお奨めします。未知との遭遇を必ずや経験できるはずです。